黒じゃなくて白を使う
とある書家の方から言われた言葉をふと思い出しました。「ののさん、書はねぇ黒じゃなくて白い方を使うんだよ」。
黒、すなわち墨で書かれた具体的な文字、象形そのものではなく、それ以外の部分、白い部分をこそ使うのだと。
その言葉はすぐに合点がいきました。私の好きな芸術の大半がそのようにデザインされたものであるからです。例えば花を生けるなら空間を使うし、好きな写真は対象以外の空間を感じさせるものが多いです。
音楽もまったく同じでありたいと思っています。例えばベースソロ。空間、つまり物理的なそれではなく、音の数のコントロール。演奏するフレーズだけではなく、バックのプレイヤーの演奏まで意識した空間演出を身に付けたいのです。同様の趣旨の言葉に「音を詰め込むな」ということがあります、まったくもって同意見であり、その美意識は私も共有できます。
ただ、問題はそこに至る道。
なんとなくなのですが、頭で考えて安直に音数の出し引きなんかしているようでは駄目なのではないか?つまり、考えるのではなく「いつでも空間を使えている自分」にならないと意味がないのではないか?との思いが強いのです。
だから、極論なのですが、変に頭で考えてそれっぽい演奏をしようとするよりも、逆に心の底から本能のままにわーって喋っている方が、そこへの近道なのではないかと思っているのです。これは反対意見も多いでしょうね。「だからダメなんだよー!」とでも言われそうです。以前言って欲しいと書いた言葉ですが(笑)。
でもこのやり方は多分変えられないでしょう。確信持っているから。まだまだその高みのふもとすら見えていないけど。
夜中にふと、そんなこと思い出しました。