日記

靴磨きと自衛隊と。

そういえば昔、渋谷の駅前とかには何人かの靴磨きの人たちが列を作って仕事をしていたなぁとか、自分で靴磨いているイメージ...磨きたいイメージが最近なんとなく頭にあったので、靴磨きなんぞ始めました。いや、始めたって言うのも変ですね。何度か磨いてみました。時にはブラシをするだけだったり、たまにミンクオイル塗ってみたり。正式なやりかたはよくわからないのですが、なんとなく適当に。

そして、これがなんか良いんですよね~、気持ちが落ち着くというか、ほっとするというか。

そういえば、自衛隊時代には新しく入隊した時に与えられた官品の半長靴(はんちょうか)を、ピカピカに磨き上げていたなぁ。勤務時間が終わり、夕食をとり、風呂へ入り、洗濯をし、ひととおり明日の準備が終わると、皆廊下に出て、並んで自分の靴を磨くのです。なにせ、班長(指導教官)から口を酸っぱくして言われるのです。「ピカピカに光らせろー!」って。

ただし、新隊員だから靴も支給されたばっかり。これが簡単には光り始めません、毎日毎日根気よくブラシをかけ、クリームを塗り(これも日本手ぬぐいが一番良いとか教わる)。やがて、前期の教育期間が終わるころ(3か月後)、何層にも何層にもなったオイルやクリームなどがはじめてピカピカと光沢を放ち始めるのです。確か班長からはこう言われてましたっけ。

「その靴の先で、常に髭が剃れるようにしろ!」って。鏡のようにしろってことです(笑)。

当時は真に受けて(そりゃそうだ、班長怖いもん)、必死になって磨いていました。丁寧に丁寧に。毎日1時間くらいかけて。
そして、その時間に...夢中になって靴を磨きつつ、いろんなことを考えていました。明日やる訓練の事、体の筋肉痛、坊主にされた髪の毛の事、外出したいなぁとか(しばらくは外にすら出られない)、配属先の希望どこにするかなぁ、友達と遊びたい、もう辞めて帰りたいなぁとか。その時はまったく触れていなかった(もちろん最初は持ち込めないですから)楽器や音楽のことも。
そう、疲れた毎日の中で与えられた、唯一の思考の時間だったのです。

この夜中に靴を磨きながら、そんなことを先ほど思い出していました。あの時の、時間がとまっているようにすら感じる永遠の時間。体力的に厳しい中での、面倒だけどでも幸せな時間。あー、懐かしいなぁ。

そして実は、今もその時使っていた道具は、当時のまま持っていて使っているのです。「311中隊 野々口」と書かれたバッグの中に入っているそれは、ひどく懐かしい時間を思い出させてくれます。

 

よし、思いついた。もう少し靴磨きの時間を増やそう。特に意味は無いけど、何かそうしたした方がよい気がしてきたから。ついでに靴磨きセットもいろいろ試して靴磨きを楽しもう。もちろん311中隊時代のもそのまま残して。

ちょっと秘かな楽しみが増えました。

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